2015/02/02

美しい朝食

 その日は疲れもあって、暖炉の前から引き上げたあとはあっという間に寝てしまった。朝方、ジェイキーとエヴァンが話している声をうとうとしながら聞いていたのに、次に目が覚めたときはもうすっかり綺麗な青空が広がっていた。
 
 おはよう、と言いながら階下に下りると、おはよう、と蘭ちゃんがコーヒーを手渡してくれる。キッチンではジェイキーとエヴァンが2人で料理をしていた。ジェイキーは自分の名前が刺繍された黒いエプロンをつけている。それ、いいね、と言うと、"Yes, I like it!" と得意気に返事をした。
 
 卵の黄身にアレルギーがあるんだよね、という蘭ちゃんのために、エヴァンは器用に卵の黄身と白身を分けて、かき混ぜた白身をフライパンにじゅうっと流し込んでいく。背が小さくてガス台に届かないジェイキーは自分もやりたいとねだり、蘭ちゃんは"Be careful, Jakey." と2人をあたたかく見ている。週末の朝の家族の風景、と思う。
 
 朝の柔らかい光の中にセッティングされた朝食は、簡素ながらも愛情がたっぷり詰まっていた。その風景は、間違いなく「美しい」と言えるものだった。