2013/05/15

私の歓喜の歌

 11日の夜、山形交響楽団の第229回定期演奏会へ。
 メインプログラムであるブラームスの交響曲第1番は、完成までに21年を要したことで知られる大曲だ。ベートーヴェンを敬愛していたブラームスは、「ベートーヴェンのような巨人の足音を背後に聞きながら仕事をするのがどれほど大変なことか、君たちにはわかるまい」と言ったとされている。ブラームスほどの人でも、ベートーヴェンを超える曲を書かなければと思っていたことは想像に難くない。
 ティンパニの重々しい音が印象的な第1楽章は闇に包まれているが、それが楽章が進むに連れてすこしずつ明るくなっていく。最後の第4楽章はベートーヴェンの第九になぞらえ、歓喜の歌をうたいはじめる。同じ曲であっても、指揮者やオーケストラが違えば、違う曲に聴こえるのは当たり前のこと。音楽はなまものなのだ。それがわかっていてもなお、山響が表現したこの日のブラームスの歓喜の歌は、本当に素晴らしかった。あの音はあの日しか聴けなかったもの。その場にいられたことそのものが、私の歓喜の歌だった。

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