2014/09/19

露草

 あれっ、と思った。今まで庭でこんな色合いのものは見たことがない。それは小さな露草だった。

 我が家は築30年ほどになる平屋の借家で、もう住み始めて8年くらいになる。猫の額にも足りないような小さな庭があるのが好きで、ここに決めたのだ。大家さんの関係者が庭師だったそうで、小さいながらも松や椿、ビョウヤナギにホトトギス、ギボウシ、ドクダミなどが植えてある。でも、露草は見たことがなかった。

 露草なんてあったっけ、と周りを見渡したら、我が家の目の前にある公園の壁にも露草が咲いているのを見つけた。嬉しくなって夫を呼び、ほら、と2人で眺める。小さくて楚々とした花。

 でも、たった2日後に公園の露草は雑草として刈り払われ、跡形もなくなってしまった。こんな小さな花なのだ。花が咲いていると気に止めた人もいなかったのかもしれない。それでも私は取り払われてしまったことが惜しくて、庭の露草を眺めながら、来年また咲いてくれるといいけれど、と願っている。

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