2014/11/20

夜を飛ぶ飛行機に乗るために

 今、飛行機に乗り込んでいる自分が信じられないくらいだった。
 
 そのために日程を確保していた仕事がずれ込み、何よりも大事な睡眠時間さえも削っていた直前の2週間弱。1回に5時間以上かかる打ち合わせを2回繰り返し、もちろんその前後には自分ひとりでの作業が不可欠で、「切羽詰まる」という言葉では表現できないほど追い詰められ、髪の毛が逆立っているのではないかと確認せずにはいられないほどだった。
 
 出発当日も午前4時近くまで仕事をし、数時間の仮眠を取ってまた仕事に没頭し、なんとかすべてのデータを送ったのは18時過ぎ。フライトの、わずか6時間前だった。
 
 ぐったりと疲れた体でスーツケースを引いて空港に向かう。自分の体だというのに、持て余すほど重い。食べたいものが思いつかなくて、注文口で延々と迷った末、クラムチャウダーをオーダーする。これから行くサンフランシスコでもっとおいしいクラムチャウダーを食べられるのではないか、と思ったのは、もう食事も終わる頃だった。
 
 いつもなら空港そのものも楽しみなのに、今回はその余裕がなかった。最低限の両替をし、買い忘れたマスクと胃薬、親戚への手みやげだけを買い、搭乗口近くの椅子に身を沈める。願いは今すぐ寝たいということだけで、乗り込むなりブランケットを肩の上まで引っ張り上げ、離陸の瞬間さえも覚えていない。
 
 夜を飛ぶ飛行機で、深い眠りを貪った。

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