就職するころまでは、「いちばん好きな季節は春」と言ってはばからなかった。自分の名前にも入っているくらいだし、と。
突然、それが苦手になったのはなぜなのだろう。以前は好ましいばかりだった、ざわざわと新しく始まる雰囲気や、急に景色が色つきになり、あらゆる生命が蠢き出す感じ、それらはいったん気になり始めるとどこまでも疎ましくなるのだから不思議なものだ。もしかしたら、私自身が決して変化を好むわけではない性格であることも関係しているのかもしれない。
それでも、ここ数年は春の兆しを見つけると頬がゆるむ。東京では、一足も二足も早くお花見気分を味わうこともできた。つけているストーブもよく止まるようになった。もう、ダウンコートはクリーニングに出してもいいかもしれない。
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