2014/03/20

焦がれる

 東京ではもう春一番が吹いたというのに、今日の山形はまた雪が降った。ただ、雪とはいっても、たっぷりと水分を含んだみぞれのようなぼたぼた雪だ。
 一度だけ、きちんと桜を見られなかった春がある。高校を卒業した年、大学受験が終わり、私の引っ越しは4月の入学式の直前と決まった。山形の桜が咲きはじめるのは4月の中旬以降で、とりわけ暖かかったその年、引っ越した静岡ではとっくに桜吹雪になっていた。県立美術館から大学へと続く桜並木の下を歩きながら、桜を見られないことを残念に思ったことを思い出す。その分、次の年に見た、レンガづくりの校舎の手前に咲く満開の桜は、とても美しく感じられたのだった。
 あと1ヶ月もすれば、空気さえも薄いピンクに染まる。そして、今の私は、そのときが来るのを心待ちにしている。焦がれている、と言ってもいいほどに。

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