2014/06/18

枯れる準備

 両親がお墓を買ったのだという。
 不思議と何の感慨も湧かず、あえて言うなら、もうそんな歳になったのね、と思うだけだった。
 複雑な家庭環境で育った父には、もはや実家と呼べるところはとうの昔になく、人生のほぼすべてを実の親と同居してきた母には妹しかおらず、祖父母の苗字は途絶えてしまい、入るお墓がなかった。2年前に70歳を超えた父と来年70歳を迎える母にとっては、ずっと気になっていたことだったのだろうと思う。
 市内の、ちょっと高台の、山みたいになってるところでね、見晴らしがいいのよ、お墓参りに来てくれた人がいい景色が見えるように、西向きの区画を買ったの、私たちが2人とも死んだら、そのまま永代供養になるから、何も気にしなくていいからね、……。
 そんなふうに話す両親の言葉を聞きながら、私は、この人たちは穏やかに枯れる準備をしている、とだけ思ったのだった。そして、人はみんな、結局そこに行き着くのだな、とも。

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