2012/09/24

温泉の効能

 すこし、疲れていた。いつになく立て込んだ仕事に、心よりも体が先に悲鳴を上げ、もうめったなことでは出ない腰痛が、かなりよくなったもののずっと鈍く続いていた。体の芯に、澱のように溜まっている徒労感を何とかするために、いそいそと温泉へ行く。
 近くには温泉がたくさんあって、こういうときにはこんな環境がありがたい。昨日は、もう3年近く行っていなかった山の中の温泉へ。いつの間にか内湯ができて、施設そのものも広く、きれいになっていたのに驚く。ちゃぷり、と湯船に身を沈めると、思わず深い深い溜息が漏れる。最近よく行っていたところよりもお湯がぬるくてやわらかく、それがたまらなく心地よかった。親子づれで来ていた、5歳にもならないであろう子どもが2人、「大きいお風呂って気持ちいいね」「そうだね」と話しているのを聞いて、こんなに小さくても温泉は気持ちいいものなんだな、と思わず笑みがこぼれる。
 そろそろと露天風呂に移動して、再びお湯に身を委ねると、かすかに雨が降っていた。露天風呂には、「雨の日は笠をどうぞ」と、5つくらい笠が壁にかけてある。あれをかぶってお風呂に入ったら、きっとかさじぞうがお風呂に入っているみたいに見えるんだろう、と思うとなんだか可笑しい。顔を夜空の方に向けて、深呼吸を繰り返す。ざぶり、とお湯から上がったときには、不思議なくらい体が軽くなっていた。

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