2012/12/10

街を感じる

 地に足を着ける、ということについてなんとなく考えていたら、ちょうど読んでいた本の中にこんな文章を見つけた。
 「『見慣れた街の中で』の序文で、牛腸は「われわれ一人一人の足下からひたひたとはじまっている、この見慣れた街」と書いている。街は、頭上からでも、背中からでも、お腹からでもなく、「足下からひたひたと」生起してくるものだ。出発点にある足下の感覚におぼれないために、地に膝をつけるのはまさに理想的な姿ではないだろうか。」(堀江敏幸『回送電車III アイロンと朝の詩人』中公文庫、「存在の「いざり」について」59ページより)
 胸椎カリエスを患い、その分地面と自分の距離が近かった牛腸茂雄だからこそ、「足下からひたひたと」街を感じることができたのだろうか。
 牛腸茂雄の撮った、木の前でふたりの女の子が手をつないでいる写真を思い出している。

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