2013/01/30

ささやかな夢

 断言できる。私が今までいちばんお金をかけたものは、本だ。
 小さいときから本を読むのが好きだった。自分では覚えていないが、読み聞かせもだいぶしてもらったという。おもちゃや人形はあまり買ってもらえなかったけれど、本だけは十分に与えてもらった。どこにいても、本のあるところが自分の居場所だったし、何も読むものがないと不安になる。10歳の誕生日に本を10冊買ってもらい、2日で全部読み切ってしまって「もっと買って」と言って呆れられたこともある。旅先の東京や京都で3万円ほども本を買ってしまい、お財布は心もとなくなるやら荷物は重くなるやらで大変な思いをしたこともある。引越し屋さんに、本の多さに驚かれるのも常だった。
 今や、本の形態もさまざまだ。私自身、電子書籍を読むことも多くなった。でも、やっぱり新しく買った本の表紙をめくるときの、あの高揚感は何ものにも代えがたい。紙の質感、インクの香り、紡ぎだされるものがたり。今でも、私の居場所は本のあるところ。天井まで本棚があって、上のほうははしごにのぼらないと本が取れない、そんな家に住むのが夢だ。

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