2012/11/02

19歳、17年

 はじめて行った外国は、イギリスだった。19歳の夏。大きい大きいスーツケースを友達のお父さんの車に乗せ、夜も明けきらないうちに成田を目指して静岡を出たことを、今でも昨日のことのように憶えている。何が起こるのか予想もつかなくて不安だらけで、でもとにかくわくわくしていた。何にせよ、はじめての経験をしたところは記憶に残る。だから、私にとって、そのあとのさまざまな出来事も含めて、イギリスはちょっと特別な国だ。そして、そのあとも行きたい行きたいと願いながら、これだけの月日が経ってしまった。
 先日の広島に引き続き、17年ぶりにイギリスに来ている。人の細胞は常に入れ替わっているし、街自体も変わるから、今目にするロンドンははじめてのようなものだ。私の覚えているロンドンは、記憶の産物でしかない。でも、それでもひどく嬉しくて、冷たい風が吹きつけて涙目になることも、迷子になることさえも楽しんでいる。

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