2012/11/06

visitor

 ひとりで海外にいると、当たり前だが一外国人でいられるのが気楽でいいな、と思う。ほとんど片言の英語しか話せない、背が小さいただの東洋人。いつもそれほど肩肘張って生きているつもりはないが、私が私自身の大きさでいられる気がするのだ。うまく説明できないけれど。
 ヴィクトリア&アルバート博物館、ナショナル・ギャラリー、と2日間続けて美術館に行っている。こちらの美術館はほとんどが入場無料で、それがとてもありがたい(もちろん寄付はする)。どちらも収蔵作品の量があまりに膨大で、途方に暮れてしまう。それでも、見たかったゴヤやカラヴァッジョ、ルーベンス、セザンヌにゴッホ、フェルメール、どれもじっくりと堪能した。椅子を持ち込んでスケッチをしている男性、熱心にメモを取っている学生らしき女の子、たどたどしい英語で一生懸命お母さんに話しかける幼い子ども。こんな環境で暮らせたらどんなに幸せだろう、と考える。
 日の当たるトラファルガー広場のベンチに座って、ぼんやりとミルクティを飲んだ。足元にはたくさんの鳩。
 ただの一外国人でいられるのは、私がここではvisitorだからなのだろうな、と思う。ふらりとやって来て、またすぐ去る。

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