2013/04/10

ラジオと野球中継

「梨果さんあんまりラジオを聴いたことがないのね」
 私は、華子の愛用のラジオをちらっとみた。横長の四角形、ひっぱるとのびる銀色のアンテナ。
「ラジオの番組がおわるときってね、親しい人が帰っちゃうときのような気がするの。それが好き。私は小さい頃からいつもラジオを聴いていて、親しい人にまだ帰ってほしくないって思っても、やっぱり時間がくると帰っちゃうの。きちんとしてるの、ラジオって」
(江國香織『落下する夕方』角川文庫、191〜192ページより)
 私は以前から夜に弱いので、ラジオの深夜番組にあまり馴染みがない。ごくたまに、オールナイトニッポンの2部を聴いていたくらい(夜更かしではなく、もちろん早起きで、だ)。
 だらだらと際限なく続くような気がするテレビ番組より、ラジオはよほどさっぱりしている。できるだけ言葉を尽くして説明してくれるし、きちんきちんと終わる感じが好ましい。テレビよりも親密な感じ。そういえば、小さい頃に野球のテレビ中継が延長にならずに終わってしまうと、父と一緒にラジオに移動して実況中継を聴き、見えはしないプレーに一喜一憂していたのを思い出す。

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