2013/04/19

ささやかな復讐

「君の幸せが死んだ人たちにとっての幸せだよ。」
 昇一は言った。
「そう思う人のほうが少ないと思う、人ってもっとどんよりしたものよ。どろどろして、自分でもわからないもやもやを幸せな人にぶつけるもの。」
「それじゃあ、言い直すよ。」
昇一は言った。
「君の幸せだけが、君に起きたいろんなことに対する復讐なんだ。」
(よしもとばなな『彼女について』文藝春秋、177〜178ページより)
 嫌なこともつらいこともたくさんあって、どこにいても馴染めなくて浮いている、腹を割って話せる友達もいなくて孤独だ、と思っていた小さいときの私に、「大丈夫、あと20年くらいしたら本当に楽しい毎日を過ごせているよ」と言ってあげたい。
 人はみな、幸せになるために生まれてくるのだ。私は今、ささやかな復讐をしながら生きている。

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