2012/10/11

季節の移り変わり

 玄関を出て、あ、と気づいた。ホトトギスの蕾が膨らんでいる。
 我が家は築30年ほどの一軒家の借家だ。ここに住んで、もう5年になる。それまではマンション暮らしだったのだが、どうしても地に足の着いた生活をしたくなり、一軒家に住みたいと探して見つけた物件だ。引っ越してきた当初は砂利だった駐車場部分を、車を停めやすいようにコンクリート敷きにするね、と言ってくれた大家さんに、草木の部分は残しておいてください、と私たちはわがままを言った。松の木があり、花がたくさん咲く庭をすべてコンクリートで固めてしまうのは忍びなかったのだ。大家さんは快く受け入れてくれ、今でも小さな庭は残っている。
 春になればつくしがほうぼうに頭をのぞかせ、そのうち立派なアスパラが生える。白水仙のあとは鮮やかなピンクの八重の椿が咲き、目の前の公園ではソメイヨシノと枝垂れ桜が咲き乱れる。そのうちドクダミがわさわさと葉を茂らせ、たくさんのビョウヤナギが咲く。そのあとに咲くホトトギスが終わったら、まもなく冬が来る。猫の額よりも狭い庭だけれど、庭に咲く花で季節の移り変わりを知ることができるのは幸せなことだ、と毎年思う。
 それにしても、今年は5月くらいから走りっぱなしだった。ドクダミが茂っていたのは記憶の片隅にあるけれど、一斉に黄色い花を咲かせたはずのビョウヤナギの印象があまりない。もうちょっと余裕を持ちたいものだ、と思いながら、ホトトギスの蕾が開くのを待っている。

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