2012/10/05

本棚と自信

 人の本棚を見るのが、たまらなく好きだ。そこに、その人自身が表れている気がするから。
 私自身の本棚を考えてみても、たとえば結婚したてのときの本棚と今のそれはまったく中身が違う。本を読むのが好きなのは変わらないけれど、志向・嗜好は変わるものなのだな、と思う。以前はもっとふわふわした文章が好きだった。地上15センチを漂っているような、甘い本が好みだったのだ。つまり、それは私が若かった、ということとほぼ同義なのだと思う。
 いくつか年を重ねて、以前も読んだけれどそれほど心に響かなかった作家の本が、今は何よりも大事だ。きちんと説明ができ、感情は孕むけれどそれに流されない、そういう文章を好むようになった。明晰であり、論理的であり、理性的であることが、今の私の本を選ぶポイントのような気がする。もちろん、それ以外の本もたくさん読む。ただ、自分の手元に置いて何回も読み返す本は、やはりその条件に当てはまるものが多い。
 そして、今なら、本棚を見られても恥ずかしくない。やっと自分に根拠のある自信を持てるようになったということだ、と言い切ると大袈裟に過ぎるだろうか。

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