2014/02/28

詩のやさしさ

 ところで「かた雪かんこ、しみ雪しんこ」と書いたのは宮沢賢治で、『銀河鉄道の夜』や『注文の多い料理店』、『セロ弾きのゴーシュ』などで有名だけれど、私が大事にしているのは、むしろ宮沢賢治の詩のほうだ。中でも、「告別」という一編がたまらなく好きで、姿勢を正したいときに読み返す。
*「告別」 は新潮文庫の『新編 宮沢賢治詩集』所収
 「告別」は10年以上前から大好きな詩だ。ただ、詩を読むようになったのは、明らかに震災以降のこと。当時は長い文章を読めず、読んだとしてもただ素通りするだけだったのに、詩はすうっと気持ちに馴染んで浸透してくるような感覚だったのだ。宮沢賢治だけでなく、谷川俊太郎、長田弘、池澤夏樹、高村光太郎、工藤直子、と貪り読んだ。
 そのときの私は、震災で欠けてしまったものを探していたのだと思う。テレビのニュースを見ては泣き、ネットを巡回しては泣き、空を見ては泣いていた私は、もちろん詩を読みながらも泣いた。
 詩は、やさしい。底抜けに。それが、私が探していたピースだったのだ。

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