そういえば、フィンランドでは、嫌な思いをただの1回もしなかった。
ニューカッスルはイングランドの北部にあって、スコットランドにほど近い。一時は炭鉱で栄えたのだというが、それほど大きな都市ではなく、留学生にも住みやすいところだ。私はごく普通のイギリス人家庭にホームステイし、自分がアジア人であることを気にしたことはなかった。
でも、ロンドンでは違った。ほんの数日滞在しただけなのに、人種差別的な言葉がつきまとう。英語もできない、実年齢より子どもに見える”visitor”であることを、どうしても意識せずにはいられなかった。
たぶん、悪気はないのだ。意識しない優位性とでも言えばいいのか。たまたまだったのかもしれないし、あまりにも私が英語ができないことにいらいらさせられたのかもしれない。もちろんそんな人ばかりではなかったけれど、イギリスという国では私は外国人であるということを痛感させられ、痛感させられたことに傷ついたのも事実だった。それでも、私はイギリスが大好きなのだけれど。
フィンランドの人はみんな親切だった。お店に入ればマニュアルではない笑顔が返ってくるし、料理をサーブしながら「楽しんでる?」と声をかけてくれる。トラムの乗り場でまごついていれば「どこに行きたいの?ここに行きたいなら、この停留所で降りればいいよ」と教えてくれる。べったりもしていないし、かといってそっけなさすぎない、その距離感がとても心地よかった。
visitorがvisitorのままでいられる場所。フィンランドに恋をしてしまったのは、それも大きな理由のひとつなのかもしれない。
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