2015/08/13

【工藤春奈のものがたり】8 導かれるように出版社へ

就職活動に対する危機感は、
かなり早い段階から持っていました。

たいした資格を持っているわけでもなく、
特別な技術があるわけでもない
地方の大学の文系女子学生にとっては、
どうやって立ち向かったらいいかもわからない強敵でした。

メーカーは自分が何をするのかわからないし、
商社なんてもっとわからない、
金融は向いている気がしないし…と
お得意の消去法で決めた結果、
当初は航空・鉄道や運輸業界ばかり狙っていたのです。

でも、消去法で決めていることには
突き動かされるような衝動もなく、
届くのは「お祈り」のペラペラの文書ばかり。
何十社落ちたのか、もう思い出せません。

あまりの決まらなさに、
「私には会社で働くだけの価値がないんだろうか」
とひどく悲観的になり、
泣きながら実家に電話したこともありました。

そんなときに、ふと
新聞の求人広告に載っていた
ある出版社の名前が目に止まりました。
「この会社知ってる気がする」と名前を調べてみると、
国際経営論の先生が書き、
自分の授業で使っていたテキストを発行していた
会計・経営の専門出版社。

その先生に
「この会社を受けてみようと思うんですが」
と相談したところ、
「いいんじゃないか。ぜひ受けてみなさい」
と言われたのです。

出版社の競争率が非常に高いことくらいは、
私も知っていました。
でも、なぜかこのときは
「受かる気がする」という根拠のない自信がありました。

「書類選考に通ったので、東京まで面接に来てください」
と言われて赴いたそのときに知らされたのは、
すでに東京での通常採用は終わっており、
遠隔地からの受験者を集め、
1日で小論文と面接3回をこなすスケジュールだ
ということでした。

慣れない東京で
小論文と3回の面接を受け、
それでも「楽しかった」という印象を持って
アパートに帰り着いた私に翌日届けられたのは、
「内定です」という1本の電話でした。

就職活動を始めてから実に半年以上、
結局この内定をいただいた時点で
私の就職活動は終了し、
それまで1回も考えたことのなかった
出版社への入社が決まったのです。

私にとっては、
思いがけないドラマチックな幕切れでした。

9へ続く。

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