2015/08/13

【工藤春奈のものがたり】9 月刊誌の体験記でしみじみと感じる

無事に会社に入社し、
入社式で発令された辞令によって
私は編集部に配属されることになりました。

会計士や税理士を目指す人、
簿記などの資格を取りたい人のための
受験雑誌やテキスト、問題集をつくる部署でした。

卒業した学部には会計関連の授業が一切なく、
「借方」「貸方」の読み方すら知らなかった私には、
月刊誌のどこを読んでも
日本語の意味がわかりませんでした。

その中で唯一、
会計の知識がなくてもわかる内容だったのが、
公認会計士試験の合格者が綴る
受験体験記のコーナーだったのです。

「この人は何年も何年もかかって合格したんだなあ」
「この人の勉強法は参考になるな」
「この人の受験はこんなことが大変だったんだ」
と知ることのできる受験体験記は、
もちろん読者の方にもためになっていたはずですが、
誰よりも私が興味を持って読んでいたと思います。

原稿を書いてくれた方が
次の月の体験記を書く人を紹介してくれる
というシステムで成り立っていた
そのコーナーの原稿が送られてくることを、
私はとてもとても楽しみにしていました。

「公認会計士試験に受かった人」
とだけくくってしまえば、その見方しかできません。

でも、その人たちにも
こんなにたくさんのストーリーがある。
それは決してひとりとして同じではない。
私にとっては、
それを深く心に刻ませてくれるコーナーだったのです。

10へ続く。

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